お客様の課題
- 自社のSNSサービスの運用にあたり、UX/UIに関する知見を持ったスタッフが運用チーム内にいないため、現在のサイトのデザインでユーザーに優れたUXやユーザビリティをしっかりと提供できているかどうか自信がない
- UX/UIデザインに関する専門書を用いてチーム内で勉強をしているが、専門書に書かれている知見をどのようにサイトのデザインに適用していけばよいかがわからない
実施したプロジェクト
- 「お客様自身でWebサイトの基本的なユーザビリティを担保できるようになること」を目標として、UXやユーザビリティの基本的な考え方のレクチャーに加えて、お客様の運用チームの方にも実際に手を動かしながら自社サイトのWebユーザビリティを考えていただくハンズオンセミナー(3時間×2回)を企画しました
- 今後のサイト改善活動を独力で検討していけるよう、お客様のチーム内ですでに勉強を進めている専門書の読み方・活用方法についての解説を行いました
プロジェクトの詳細
プログラム
下表は、ハンズオンセミナーのプログラムです。1回あたり3時間のセミナーを、課題提出・レビュー期間を挟み、2回に亘って実施しました。コロナ禍での実施ということもあり、オンラインビデオ会議ツールを用いてセミナーを実施しました。
STEP | 実施内容 | 所要時間 |
---|---|---|
1日目(前半) | UX/ユーザビリティサイトの基礎知識の解説 サイトの現状把握・改善方法を解説 |
90分 |
1日目(後半) | 講師による実演 | 90分 |
課題実施 | 自社サイトの評価(お客様が実施) 講師による課題の事前レビュー |
2週間 |
2日目(前半) | 課題の解説 | 120分 |
2日目(後半) | お客様のディスカッション | 60分 |
講義パート
このハンズオンセミナーに参加されたサービス運用担当者の方は、UX/UIやユーザビリティに関する基本的な知識を有していない方も多く、また、Web関連の業務に携わったことがない方など、様々なバックグラウンドをお持ちの方がいらっしゃいました。
そこで1日目の前半では、UX/UIやユーザビリティの概念を「ご自身の普段の経験」と照らし合わせながら理解できるように、以下のように、身近にあるオンラインショッピングサイトやスマートフォンアプリなどのUIデザイン事例を用いて説明を行いました。
- 「使いにくい」と感じさせてしまう問い合わせフォームとは?
- 「手取り足取りのヘルプ」と「必要最低限のヘルプ」は、どちらの方がユーザビリティが高い?
- 「実店舗をよく利用するユーザーが、サイト上でも商品の買い回りがしやすい」という体験(UX)を与えるUIデザインはどのようなもの?
実践パート
1日目後半からは、単に「UXやユーザビリティとは何か?」を理解するだけではなく、「お客様自身で自社サイトの最低限のユーザビリティを担保できるようになる」ことを目標として、まずは講師がサイトに潜むユーザビリティ問題の発見方法や改善案の検討方法について実演を行いました。その後お客様には、自社サイトを対象として、ご自身で手と頭を動かしていただきながら、「なぜ、ユーザーはそのデザインは使いにくいと思うのか?」「なぜそのデザインにするとユーザビリティが高くなるのか?」を考えるような課題を1回目のセミナー終了後に宿題として行っていただきました。2日目のセミナーでは、お客様に事前提出していただいた課題に対して講師が事前にレビューを行い、解説やディスカッションを行いました。
最後、今後の自社サイトの運用・継続的改善における課題点、UX/UIの専門書籍の活用方法、運用チームのスキルアップ方法など、お客様が抱える様々な課題についてのディスカッションを行いました。
今回のセミナーについての振り返り(講師コメント)
今回のハンズオンセミナーは、UX/UI・ユーザビリティの専門家やUIデザイナーが対象ではなく、サービスを運用されているご担当者様を対象として「独力でもユーザビリティ改善活動を行えるようになる」ことを目指すという、やや挑戦的な試みを行いました。実際、ユーザビリティ評価指標やデザイン原則といった専門的な知識や活用方法を、3時間×2日間という短い時間の中で初心者が完璧にマスターすることはとても困難なことであると思います。
しかしながら、今回、お客様に独力で自社サイトのユーザビリティ問題の洗い出しや改善案の検討を、実際に手を動かして考えていただくことにより、以下のような点で非常に価値のある取り組みとなったと考えています。
- サービスの運用を担当される方の立場上、サイトの機能・デザインを決める際には、どうしても「ビジネス戦略」や「システム要件」に重心が偏りがちになってしまうが、「ユーザー視点」での問題発見を自ら試み、そして、実際に「使いにくさ」を発見したことで、サービス運用・開発において「ユーザーとのギャップが生まれていないか?」という問題意識を常に持てるようになる。
- 運用しているサイトにデザインガイドラインが存在し、例えば「ローカルナビゲーションのデザインは〇〇にする」のような項目がある場合、担当者はそのルールに従っていさえすれば問題ないと考えてしまうが、「なぜ、ユーザーはそのデザインは使いにくいと思うのか?」「なぜそのデザインにするとユーザビリティが高くなるのか?」という視点でデザインを検討してみることで、むしろ例外的にガイドラインに従わないほうがよい場合があることなど、柔軟なデザイン検討ができるようになる。
本プロジェクトに関連するサービス
当社では、上記のようなハンズオンセミナーの企画・実施に加えて、(株)ミツエーリンクスが日本マイクロソフト(株)と共同開発したパッケージ型のUXデザインワークショップの開催や、(株)ミツエーリンクスが独自に開発した情報設計(IA)に関するワークショップの開催も行っておりますので、お客様社内におけるUXデザインの啓蒙やスキルアップなどにご興味がおありの方は、是非ご検討・お問い合わせください。
UXリサーチャー歴10年以上。大学院で専攻していた認知心理学の知見や実験手法をUX/UIデザインに応用しながら、日々実践や研究を行っている。博士(情報科学)。