お客様の課題
- 国内ツアー旅行商品の販促・予約を受け付けているサイトのリニューアルにあたり、ターゲットとなるシニアユーザーに対して優れたUXをもたらすサイトを構築したい
- 現状、Webサイト経由での予約申し込みよりも、自社で発行している紙媒体メディア経由での電話申し込みの方が多いが、コールセンターのコスト削減のためにも、Webサイト経由での申し込みを増やしたい
実施したプロジェクト
- ツアー旅行をよく利用しているシニアユーザーへのインタビューを行い、ツアー旅行の決定に至るまでのカスタマージャーニー(情報収集、行動、意識)を把握しました
- 現行サイトでユーザーに情報収集やツアー旅行商品の検討を行ってもらい、サイトでの行動傾向やユーザビリティ上の問題点を把握しました
- 調査結果に基づいてサイトのデザイン・リニューアルを行ったところ、サイト内でのユーザー体験やユーザビリティが向上したことを示唆するポジティブな結果が確認されました
プロジェクト詳細
カスタマージャーニーの把握(ユーザー調査)
ツアー旅行商品の販促・予約サイトに掲載すべきコンテンツや優先度を検討するために、まずは、サイトのメインターゲットとなるシニアユーザーが、ツアー旅行を検討する際にどこで・どのような情報収集を行っているか、そして、どのような理由でその情報媒体を利用しているかを把握する必要があると考えました。また、ツアー旅行商品を販売しているサイトを、どのような意識や期待を持ちながら利用しているのかを明らかにすることで、ユーザーにとってのツアー旅行会社サイトの位置づけを明らかにできると考えました。そこで、普段からツアー旅行をよく利用しているシニアユーザー(6名)に、自身の行動の取り方、情報収集方法、予約方法などについて振り返ってもらうインタビューを行いました。
その結果、多くのシニアユーザーの方に共通して、以下のような話を聞くことができました。
ツアー旅行会社から毎月送られてくる雑誌があり、自宅で時間があるときや電車やバスで移動しているときに、ヒマつぶしで読んでいる(実際、インタビュー開始時間までの間、多くの方が持参した旅行雑誌を読みながら待機されていました)。
テレビの旅行番組、新聞に掲載されているツアー広告、旅行雑誌の写真をなんとなく見ていると、「旅行に行きたい」という気分になってくることが多い。
インターネットで旅先に関する情報収集を行うこともあり、観光地の口コミ情報を見たり、現地の状況(例えば、紅葉の状況など)をライブカメラで配信しているサイトを見たりしている。
ただ、インターネットのサイトの中には、自分には操作が難しいサイトもあり、いまからパソコンの操作方法を勉強するのも大変なので、簡単に情報を探せるサイトばかりを利用している。
ツアー旅行に申し込むときは、新聞広告や旅行雑誌に書かれている電話番号(コールセンター)に電話して予約する。コールセンターには広告や旅行雑誌に書かれている「予約番号」を伝えると予約ができる。
コールセンターはたまに電話がつながらないこと・待たされることがあって、インターネットで予約できれば待たなくてよいので楽だなと思うことはあるけど、サイトをうまく操作できなくて予約できなかったこともあるので、結局は電話を使ってしまうことが多い。
サイトのユーザビリティの把握(ユーザビリティテスト)
続いて、どのようなデザインがシニアユーザーにとって「操作しやすい」「情報が探しやすい」「見やすい」という体験につながるのかを明らかにするため、シニアユーザー(6名)に現行のサイトを自由に使ってもらいました。自由に使ってもらっている際には、ユーザーのサイト内での動きを観察するとともに、アイトラッキングシステム(眼球運動測定装置)を用いて、サイトのどのような要素がどのような順番で視線が向いているのかを観察しました。
以下の表がその結果ですが、パソコン向けサイトにおいてわりと一般的に採用されている情報構造・デザインであっても、シニアユーザーの行動特性にはあまり適していないことが明らかになりました。
現行サイトのデザイン | シニアユーザーの行動 | |
---|---|---|
おすすめ旅行商品の情報 | ページ中段以降におすすめツアーをたくさん掲載 | ファーストビューからほとんどスクロールせず、ページ上部以外のコンテンツにはほとんど気づかない |
キャンペーンバナー | 3秒ごとにバナーが切り変わる | バナーに気づいてクリックしようとするが、操作が間に合わない (クリックする前にバナーが切り替わってしまう) |
旅行商品の情報 | 画像情報はそれほど多くない テキストでの説明が充実している |
画像ばかりに視線が向く 長い説明文はほとんど読まれない |
予約番号からの検索機能 | トップページの右カラムに配置 | 右カラムに視線が向かず、検索機能の存在に気づかない |
調査結果に基づくデザイン改善と効果
これらの調査結果を踏まえ、サイトのリニューアルにあたっては、以下のようなコンセプト・方針に基づきデザインを行いました。
- 「旅先の写真を見ながら、旅行に行きたいという気持ちが高まるサイト体験」を与えられるよう、トップページや主要ページにおいては、おすすめ・新着の旅行商品の画像を多用する。
- 「なるべく少ない操作で快適に情報を閲覧できる」ように、1ページあたりの長さやコンテンツ量を抑えたうえで、主要な情報をファーストビュー近辺にすべて配置する。また、ローテーションバナーのような操作的な瞬発力が求められるUIを用いない。
- 「雑誌に掲載されている予約番号から商品を検索・予約する」という操作を誰でもスムーズに行えるよう、予約番号からの検索機能は各ページの目立つ位置(ファーストビューの左側 or 中央)に、目立つデザインで設置する。
- その他、ボタンやフォントなどのサイズを大きくするなど、シニアユーザーが快適に情報閲覧できるようなデザインを採用。
これらのデザイン方針によってリニューアルを行い、サイトのアクセス解析データを用いてリニューアル前との比較を行ったところ、トップページや各種ツアーページなどの主要ページにおける直帰率・離脱率の改善や、ページ間の回遊性の向上が確認されました。
本プロジェクト事例に関連するサービス
ユーザーの行動特性や考え方をしっかりと把握しておくことは、Webサイトやアプリの構築・改善において、優れたコンテンツ・機能・UIデザインを提供することに繋がります。ユーザー視点を取り入れたWebサイト・アプリの構築をお考えの方は、是非一度当社にご相談ください。
UXリサーチャー歴10年以上。大学院で専攻していた認知心理学の知見や実験手法をUX/UIデザインに応用しながら、日々実践や研究を行っている。博士(情報科学)。